フェスタ報告2012
未来ネットでは、毎年会員の皆さんと、安心な食べ物や暮らしの情報、環境問題などについて、 生産者を招きミニ講演会を開催しています。
2012年は、「おいしく楽しく学んでフェスタ2012」と題し、
取扱い品の応用例他を試食しながら、2会場で実施しました。
おいしく楽しく学んでフェスタ2012報告
★11/7 原発おことわり三重の会 柴原洋一さん
★11/9 京都精華大学教授 山田國廣さん
生きのびるために
−原発と放射能のおはなし
2012 11/7
名古屋市東生涯学習センター
原発おことわり三重の会
柴原洋一さん
私は高校の英語の教師です。専門家ではありません。素人だからこそ誰でもが原子力発電と放射能を語れるようになる話をしたいと参りました。どう転んでも原発の話は難しい。でも、生き延びる為に少しでもわかって頂きたいと思います。 1960年からいろんな原発が始まり、私自身80年頃から止めるためにいろんな事をやってきました。でも、ダメだった。大きな地震が来るので浜岡原子力発電所が危ないと、ずっと気になっていました。これが爆発した時に自分は後悔するだろうなと、 1月に仕事を辞める決断をして3月の退職を待っていたら、3月11日に浜岡ではなく福島第一原子力発電所で爆発が起きてしまいました。本当にがっくりしました。極端に言うと、自分の人生ってもうカスだったなと思ったんです。泣けてきました。
《 海と命を守る戦い 》
半世紀前の1963年、三重県の熊野灘に芦浜原子力発電所の計画が出されました。もしできていたら、原発のない海岸線の日本最長記録が、ずっと短くなってしまうところでした。当時、日本には原発がなくて、地元の漁師さんたちは東大の先生に聞いて勉強をしたんです。 その頃、未来のエネルギー、バラ色の原発だったんです。先生たちは欠点もおおらかに教えてくれました。まだ事故の可能性があるかもしれない。魚や貝に放射能が溜まるかもしれない。廃棄物の処理方法がまだないとか。そして、漁師さんたちは、これではダメだと反対を始めたんです。 南島町の7漁業協同組合、町議会で反対の決議、そして町長も反対。でも、止められません。建設には浜辺の漁業権を持つ漁協と知事の許可が要るだけです。南島町1万人が反対しようと、三重県180万人が反対しようと、全然関係ありません。 反対運動で進まぬ計画を政治力で強行しようと中曽根康弘率いる国会議員が視察船に乗り込みましたが、漁師さんたちが500隻の漁船で取り囲み、実力阻止で25名が逮捕されました。中部電力が建設地の古和浦漁協を買収して推進派優位にした時は、町民2000人が漁協を取り囲み、総会を流会させ阻止しました。 中部電力は圧倒的な南島町の力に怖れをなして、「他の6つの漁協と町長さんの賛成がない限りやりません」という一筆を書きました。が、南島町の方々は信用せず、三重県中の人たちの圧倒的過半数の署名を集めました。2000年、ついに北川三重県知事は、芦浜断念を宣言せざるをえなかったのです。37年かかりました。 しかし、残念ながら、それから12年、原発は減らず止まらず、事故が起きてしまいました。でも、いつまでもしょげてはいられないんで、次の事故を止めるために原発をなくす。撒き散らされてしまった放射能と戦うために力をつくす。この二つを自分のテーマとして、いろんな事をやっている訳です。
《 原発はどうやって電気を起こしているか? 》
やかんでお湯を沸かしている、全くその通りです。蒸気の圧力でタービンを回して発電、非常に単純な原理です。石油や石炭はやかんの底で燃やせますが、原発の燃料ウランは放射能が出るから、やかんの中に入れないといけない。そこが違います。 ウランを燃やすと、熱が出ると共に放射能が出来ます。出来た物もまた熱を出すんです。だから、火が消えたからいいという事ではなく、ポンプで水を回して冷やし続けないと熱がどんどん上がる。水が無くなった時、大変な事になるんです。 1800度くらいになると、ウラン燃料を入れている鞘の金属合金が反応して爆発しやすい水素を発生してしまう。運よく爆発せずに2800度ぐらいになると、燃料その物が溶け出します。 厚さが20cmもあるステンレスの入れ物(格納容器)は1600度で溶ける。中の物は2800度ぐらいまで上がってしまう。もう、初めから欠陥商品ですよね。 溶けた燃料は下に落ちて、今、どこにあるか実はわかりません。燃料その物が放射能の塊ですから、外にも放射能が漏れました。これが福島で起きた事故だったんです。水素が格納容器の外に出て、建屋という建物の上の方に溜まって酸素と反応したのがあの爆発事故でした。
《 原発と原爆 》
僕らの身の回りの物はすべて、真ん中に原子核があり、その周りを電子が回っている、原子でできています。一つ一つの原子は変わらないという事を前提に生活ができています。でも勝手に変わる物がある。例えば直径10cmのおにぎりは作れるけれど、直径1mのおにぎりはグシャッといく。原子の世界でも同じで、原子核が大きいと不安定になる。 自然界にある一番大きな原子核を持つのはウランです。その何種類かの原子核は1個白い米粒が飛んでくるだけで割れるぐらい不安定なんです。おにぎりを作る時、力を込めます。固まっている物はパカッと割れるとその時のエネルギー熱が外に出ます。その熱で、お湯を沸かす。これが原子核の分裂(核分裂)です。この時に、白い米粒が2個か3個飛び出す。 隣に不安定なウランがあったら、またパカッと割れ、次々に反応していく訳です。 制御棒といわれる物はハフニウムとかカドミウム等特別な物質から成り、中性子という名の白い米粒を吸い込む性質があります。2個飛び出すと1個吸い込む。だから、ゆっくりと核分裂してゆっくりと熱を出す。これが原子力発電所です。
制御棒が無いと、一瞬にしてダーッと分裂が広がる。これが核爆発です。 原子爆弾はこれを利用してウラン235だけを固めておき、白い米粒をぶつけ、どっと一度にエネルギーを放出します。 もし原発で、制御棒を無くしてしまったらどうなるか、チェルノブイリ原子力発電所で起きた核暴走事故、いきなり原爆に変わってしまいます。中曽根さんが原子力を始めようと言った時に、これはもうわかっていたんです。
《 ウランが燃えて生まれるモノ 》
核分裂で生まれるのは全て不安定な元素、最近まで生物が未経験の人工放射能です。生命が発生、発展して、人間になって、その間何億年、危険ですがそれなりに慣れてきたのが自然の放射能で、対応できる生命体が今生きてきている訳です。 自然の放射能のカリウム40は食べても体外に出ていきますが、人工放射能のセシウム137が入ってきたらなかなか出ていかない。 原発事故で放出される放射能で多いのはヨウ素とセシウムですね。半減期とは今ある放射能が半分になって行く期間の事で、セシウム137は30年で半分、100年経っても一割くらい、私たちが死んでもまだ残っているんです。 ヨウ素131は半減期8日ですが、気体になって真っ先に撒き散らされるので、人が吸い込んでしまいます。甲状腺という器官が喉にあり、ヨウ素がここに貯められて成長に関わる作用をしています。大人より、子どもが危ない。 哀しいかな肉体は、安定したヨウ素と放射性ヨウ素を区別できないから、取り込んで甲状腺が被曝、甲状腺癌になるという仕組みです。この時に安定したヨウ素をいっぱい食べたら、ヨウ素131は甲状腺に入れずに排泄されます。 今回の事故では、ほとんどヨウ素剤が配られず、飲んでいない。だから甲状腺ののう胞とか、癌の予兆が子ども達に出てきています。一人癌が発見されました。 余談ですが、甲状腺の検査結果を判定する専門委員会は「これは放射性物質とは関係ない事にしよう」と事前に秘密会議をしていました。ひどい話です。安定したヨウ素を短期間だけ飲めば防げたはずです。チェルノブイリの時もほとんどの国が間に合わず、甲状腺癌がどんどん出ている。 ウラン235の半減期が7億年、238に至っては約45億年。プルトニウム239が2万4000年。事故が起きないとしても、原発を動かせば私達の世代では責任が持てない猛毒を残してしまう。堀り出す前のウランくらいの状態に戻すのには100万年かかるといわれ、 フィンランドだけが離れ島の地下に埋めると言っていますが、アメリカもフランスもロシアも決まっていない。本当に後始末が出来ない物を動かしてしまっている状態です。
《 放射線とその影響 》
放射能の被害は人体実験出来ませんから、広島長崎は放射能を浴びた人間がどうなるのかという事の実験でもあった訳です。私たちの体は一つ一つの細胞の中に遺伝子があり「このように戻りなさい」という命令が入った修復機能を持っています。 この遺伝子の事を命の設計図、命令書と呼んでもいい。 放射線は、放射能から一つ一つほとんど永遠に360度全方向に飛び出し続ける見えないナイフなんです。ベクレルという単位は一秒間にナイフが一本飛び出す、放射能の強さです。炭に例えると炭の温度で、熱と言う見えないナイフが飛び出し続けています。 体内に取り込んだ放射能から出る放射線は、命の設計図をずたずたにし、命の根源である遺伝子を壊していく訳です。ですから、癌や白血病はチェルノブイリで調べれば1割くらいで、他にいろんな病気がいっぱい発生するんです。 食べ物の場合は、ベクレルという単位が問題になります。ベクレルとは放射線の数で、本当に何年で何億回、何本のナイフが私達の肉体を傷つけているか解らない、非常に嫌な単位です。 先月南相馬市で放射能測定をしてきました。未だに風が吹くと、周りの物が舞い上がるのか?原発から吹いているのか?値が上がります。去年12月ごろ収束宣言が出ましたが、東京電力は今も1000万ベクレルものレベルで放射能が出ている事を認めています。 福島での『除染』も別の所に放射能を動かすだけの『移染作業』なんです。シーベルトというのは、生命が放射線を受けた被曝程度を表す単位です。距離をとるか、遮れば減らす事ができますが、放射能その物は自然界では消えていくのを待つしかないのです。
《 癌の危険性 》
ICRP(国際放射線防護委員会)という団体をマスコミでは国際機関、国際的な委員会などと言っていますが、有志の学者が集まり、原子力を進める国から援助を受けて、数字を出しているただの任意団体です。それを日本が採用して基準を作っている。 ICRPは10ミリシーベルトの放射能を浴びると100万人当たり 500人(1990年)が癌で亡くなると言っています。しかし、アメリカの医学者ゴフマンさんは4000人(1981年)亡くなると言っています。ICRPとゴフマンさんの数字は全く違いますね。実態は、はっきりとわかっていませんから、 非常に微量な物が、安全だと言われる事が、まだなかなか信用できないんです。 1950〜60年代と核実験がいっぱいあり、放射能が撒き散らされました。日本全国、5〜9歳までの男子の癌死亡率グラフがあり、核爆発があると、5年遅れて値がぐっと上がる。既に60年代から分かっていたんですが、それが隠されてきた。結局、原子力を持つ国は、データを隠したり、 私たちを騙したり、反対すると「電気が消えるぞ」「経済が崩壊するぞ」と脅す。隠す騙す脅すという三つの事で原発を進めてきたんだと思います。
《 私たちにできる事・子どもたちをどう守るか? 》
日本の避難基準が法律で1ミリシーベルトと決めてあるのに政府は20 ミリシーベルトを超えるまではそこに居なさいと言うんです。逃げても補償がないと。安全ですとは絶対言わず、危険性を証明するデータがいっぱいあるのに、無いと言います。 ドイツの食品の基準値は大人8ベクレル、子ども4ベクレルですから、日本政府が決めた100ベクレルは非常に高すぎる。できれば、1にしたいんですが、なかなか難しい。「基準値は100だから流通しているのは全部100以下でしょ?」と聞かれますが、とんでもない。ごく一部しか測っていません。 だから曖昧で非常に危険な基準の中でどうやって自分達を守っていくのか? 結局は測るという事をきちんと決めておかなければいけない。それから、被曝を避けるために食べる物を選ぶしかありません。また、行政が非常に高い値を持ってくる、それを下げさせるため、最後は戦わなければいけないんです。
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福島原発事故と放射能の基礎知識
2012 11/9
刈谷市総合文化センター
京都精華大学教授
山田國廣さん
今日は3.11以後、色々な用語について、今まであやふやだった事を知識として確認する時間にして頂きたいと思います。
《 放射能と放射性物質、放射線について 》
福島第1原発で事故が起こって、放射性物質が原子炉から大気中に放出され、大気に乗って、福島県だけでなくずーっと西は静岡、愛知県にまで広がりました。降り注いだヨウ素、セシウム、これが放射性物質です。 福島第一原発から直接放射線が飛んできたというのではなく、放射性物質がどーんと吹き上げられて、放射能雲に乗って撒き散らされ、雨で落ちたのです。放射能汚染とは、放射性物質が落ち、そこから出る放射線で、放射性物質ができるという関係です。
「放射能」「放射線」「放射性物質」は、用語としては混乱していまして、「放射線」「放射性物質」の違いを明確にしていかなければいけません。放射性物質がかなり広域に降り注いで、問題になったのは、当初は飲み水とか野菜から検出されたヨウ素131です。 ヨウ素131は、8日間で半分に減る、16日間で4分の1、30日間でその半分に減っていくという風に半減期が短い「放射性物質」です。今問題になっているのは、半減期の長いセシウム137とか134です。
「放射線」と言うのは、α線、β線、γ線があります。これはギリシャ語です。ヨウ素131は、β線とγ線を出していて、セシウム137と134はβ線、γ線という「放射線」を出しています。 プルトニウムはα線を出し、原子核の核種の違いでそれぞれ出す「放射線」が違います。
γ線が飛んできて直接影響を受けるのを外部被曝といいます。「放射性物質」で汚染された食品や水を体内に取り込んで、体内の組織の中にβ線γ線を受けるのを内部被曝といいます。「放射能」というのは、放射性物質が放射線を出す能力を言います。 「放射能」と言う場合は、「放射性物質」を指す場合と「放射線」を指す場合とがあります。
食品の安全では、食品安全基準で一般食品は100Bq/kg、ミルクは50Bq/kg、水は10Bq/kgという新しい食品基準が出来ましたね。Bq(ベクレル)/kgとは何か、1秒間に1sの「放射性物質」が崩壊して、「放射線」を出す回数です。「放射能」の強さでもあります。 シーベルトは人体が受ける影響をいいます。一般的に0.05〜0.07μSv(マイクロシーベルト)/h位は、名古屋でも天然の「放射能」があります。
例えばボーンと殴ると、強さはベクレル、シーベルトは痛さです。これを単位で表しています。回数が多いほど強さが強いという事です。内部被曝による実際の健康被害は、臓器毎の影響によるので、議論する時はベクレルで議論した方がいいと私は思っています。
《 原発と原爆の違いとは 》
日本は広島・長崎で原爆被害を受けている為、非核三原則があって、持たない・作らない・持ち込まないという事になっています。しかし原発は、技術は原爆と非常に近いのに54基もあります。日本は非核三原則によって、原爆は作らないけれども、 核の研究は続けるべきだと言う政治家がいて(名前をあえて言いませんが)、いつでも原爆を作れる能力を持っているというのを誇示したい、原発をやめたくないと考えている政治家がかなりいるのです。原発と原爆の関係は微妙で、裏を探っていると非常に政治的な話になってくるという事があります。
《 放射能汚染の広がり 》
福島第一原発から放射性物質はどのように飛んできたかです。空を飛んで、雨が降らなければ地球上をグルグル回ったんですが、たまたま雨が降ってたたき落とされました。距離的に見ると愛知県は450q位で、愛知は大丈夫と思っているかもしれませんが、たまたま雨が降った所が高く汚染しました。 今、原子力規制委員会が全国16カ所の原発が事故を起こした時に放出される放射性物質の拡散予測をしていますよね。でも雨が降った時に下へ落ちる訳で、風向きと雨の予測はできる訳がないのです。あれはコンピューター好きな人の計算練習です。
今回の事故では、はるか遠くまで影響が及んでいますが、静岡県の掛川、浜松、愛知県の豊橋、三河安城、新幹線が通るみたいにお茶の葉が汚染されたわけです。お茶ときのこが一番食品の中で放射能を吸着する感度がいいのです。
これは、3日前の11月6日の日経新聞で、福島県の米、その後に新潟県の熊肉、御殿場の野生きのこが基準値を超えて出荷停止されました。熊は食物連鎖の一番上ですから、その辺の小動物や木の実を食べるので、どんどん濃縮して基準値超えという事になります。食品汚染を調べたら、 岩手の奥州市とか長野市も放射能雲は通っているし、相当広い範囲に低濃度汚染が拡がっています。100Bq/kgを越えている食品のデータを県別にリストアップしたものには愛知県が入っていて、愛知県新城市のお茶で360Bq/kg、岡崎市の荒茶は157Bq/kgと書いてある。お茶というのは乾燥させると生茶と比べて10倍ぐらい濃縮します。愛知県在住の方がどの位認識しているかですが、汚染は止まっていません。
それから淡水魚のあゆとかイワナはかなり遠くから汚染が出てきています。魚が池とか川底の細かい土砂についたセシウムを餌にするという形で、相当遠い川とか池で出てきます。さらに下ると海の底の魚の汚染です。川から東京湾にどんどんセシウムが行っているので、微細な泥について移動しているわけです。 それを魚が食べて、食物連鎖で濃縮していくものについてはかなりいっぱいあります。
次にどのような放射線核種がどこに出てきたかですが、当初東京で水道水にヨウ素131が出て、東京の人がみなペットボトルを買いまくったという事がありましたが、あれはせいぜい1ケ月位で収まりました。 残ったのがセシウム134、137です。セシウム137は半減期が30年で、30年経ってやっと半分になります。セシウム134は半減期が2年位ですから、問題になるのは特にセシウム137です。
当初ヨウ素131とういうのは甲状腺に溜まるので、ヨード剤を飲ませるべきだったのに、行政が飲ませたのは三春町位で、他は持っていたのに使わなかったのです。ヨウ素131という核種は、半減期は短いのですが、影響は大です。
この辺から相当難しい話になってくるのですが、放射線の影響としてよく言われるのは、ある量までは影響がないという曲線=許容量という曲線と、許容量が無い直線モデルがあります。どちらが正しいかという議論がずっとありますが、今政府は、100mSv/hまではがんにならないと言っています。 私は、ほぼ直線モデルが当たっていると考えています。そうすると、理論的に安全はゼロベクレルでなければならないとなってしまうので、混乱が起きます。ところが、放射線の影響というのは、常に、名古屋でも0.05μSv/h 位、自然放射能の影響を受けています。宇宙から、飛んでくるやつとか、地面に蓄積しているとか、もう一つ食品から出てくるのは、カリウム40があります。
カリウムは、緑黄色野菜とかバナナに入っていて、細胞の中のカリウムは血圧を下げたり、いろいろな代謝調整をやっている必須栄養素です。ところがカリウムのうちの0.01%位にカリウム40という核種があります。放射線を持っていて、γ線とβ線を出している。 しかし、その影響を受けながら、人間は長い間、生き延びてきました。「カリウムにも放射線があるから、セシウムも少し位摂っても大丈夫だ」と政府は言っているのですが、実は間違っています。カリウムというのは必須栄養素で、ないと困るのです。放射線を出している影響が若干あり、プラスとマイナスで、我々人間は生き延びてきたのです。それに対して放射性セシウムというのはあっては困るのです。 セシウムなんていうのは、必須栄養素でもなんでもないのです。
《 内部被曝は低線量でも影響がある 》
まず放射能の臓器への影響で一番心配されるのが心臓です。チェルノブイリ事故の時にバンダジェフスキーという方がずっと研究されました。まずヨウ素131は甲状腺に集まり、セシウムは蛋白質、筋肉に集まります。 そうするとあらゆる臓器は筋肉で出来ている訳ですから、体全部に行く訳ですが、その中で一番影響を受けやすいのは心臓だとバンダジェフスキーさんは言っています。
心臓というのは、一回やられると組織は回復しません。バンダジェフスキーさんは10Bq/kgの被曝が心臓で続くと影響が出ると言っています。10Bq/kgはすごく微量ですよ。 人間は防御機能があって、少々食べても排出する機能を持っています。セシウム137の半減期は30年ですが、人体には生物的半減期というのがあって、110日で半分になり、健康的な体はセシウムを吸収しても体の外に出せるのです。
心臓で10Bq/kg 蓄積するというのは、もっと高い濃度の食品を食べ続けて、排出される放射能を上回って蓄積されるということです。10Bq/kg のセシウムを食べたということではないのです。 ずっと食べ続けるという事が、影響が大きい訳です。当初枝野官房長官(当時)が「ただちに影響は無い」と繰り返しましたが、誰もが納得せず、長期的には影響があるということだと思いました。長期的に体の排せつ機能を上回って蓄積するような食べ方を続けるのが良くないのです。
もう一つバンダジェフスキーさんの研究で膀胱がんが増えています。セシウムが6Bq/kg (血中)で影響が出るというのがあります。一般的な臓器で50Bq/kgで影響が出ます。100Bq/kg 1回位食べても蓄積しませんが、90だろうが50だろうが、ずっと食べたらだめなのです。
たとえば発がん性でも、すぐにがんにはなりません。遺伝子がやられます。でも修復する能力があるので、簡単にはやられないようにできているのです。確実に影響が出るというのではなく、出る可能性がある世界に入ってしまうのです。
残念ながら皆さんはそういう世界と付き合わないといけません。「賢く恐れる」というのは、大変難しい事で、蓄積しないように、注意深く食べるしかないという世界に入ってしまったのです。それは原発のせいですよ。
《 きちんと検査したものを食べる事が大事 》
群馬県の安中市の保育園に除染に行きましたが、運動場の砂を測定したら890Bq/kg位出て、砂が風で舞上がって吸ってしまわないか、お母さんは心配で心配でしかたがないという状態でした。 外部被曝は、愛知県ではそんなに恐れる必要はありません。外部被曝は放射線源から離れればいいのですが、内部被曝は食品にくっついているから、組織の中に入ってしまうのでだめなのです。外部被曝ではγ線が、内部被曝ではα線、β線、γ線が問題です。
新しい基準が100Bq/kgと決まりましたけれども、検査は全部はやれませんから、すり抜けてくる可能性は十分あります。未来ネットに入って、きちんと検査した物を食べる事が重要なリスク回避です。 チェルノブイリでもそうでしたが、注意している人としてない人ではかなり差があります。安全確認したものを食べる事が大事で愛知県は微妙な距離です。
《 福島の深刻な汚染と避難できない厳しい現実 》
福島市の市役所とか県庁がある中心部が汚染されました。通学路の調査をやった後に佐藤さんという方の家に行ったら、玄関の横が50μSv/h、土は10何万Bq/kgというのが出てきました。それが去年の5月ですよ。私は放射能の専門でも除染の専門家でもありません。 佐藤さんのお宅には子供さん二人とおばあさんがおられて、家で退避しているのです。あかんやろうと思い、1年半たちますが、月2回3回と除染に行っています。ところが除染するボランティアはどんどん減って、研究者も減ってしまいました。
最後にお願いですが、愛知県の近くに浜岡原発があります。一応は止まっていますが、福島の原発事故があったから止まったのです。端的に言って皆さんが止めた訳じゃありません。福島周辺の方が受けている影響の事を考えてください。 反原発を言う人はいっぱいいるけれど、現に被曝し続けている人がいるという現実に考えがいかないのです。避難ができない人がいる以上、除染するしかないだろうと私は思っています。
現地に行くと本当に悲惨で、夜一緒に酒を飲んで話をすると人間関係がズタズタ、家族関係がズタズタなのです。将来が無い、グチャグチャです。そういう人達が現にいるという中に、浜岡原発が止まっているという事を考えてほしいと思うのです。
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