よつ葉のつどい2006報告

よつ葉のつどい2006講演会




牛乳の秘めたるパワーを科学する
06・12・11伏見ライフプラザ 上野川 修一さん
東大を退官後日大生物資源科学部教授/食品安全委員会/新食品専門調査会の座長
私は大学時代からミルクひとすじに研究をしてきました。
最初は酵素、それからタンパク質、現在はミルクの新しい働きやヨーグルト関連の研究をしています。機能性食品の概念を作り、命名者の一人です。
ミルクは何故体に良いのか 
乳は、哺乳動物の子どもが成長する為に必要なものが、完璧に含まれている完全食品である。それが全ての原点になろうかと思います。原則として母乳を人間は人乳、牛は牛乳と分けて考えています。
タンパク質とカルシウム(以下Ca)はミルクの基本的成分です。Caは骨格を作り、タンパク質はそれについている筋肉を作り、脳とか器官を作っていきます。CaはミルクのCaが最も吸収しやすく、タンパク質は栄養のバランスが良く、骨・筋肉・脳・心臓等を円滑に動かす成分が含まれています。
母乳中には、誕生したての子どもに抵抗性をつける成分が含まれ、さらに人乳中には、子どもの腸内に良い細菌が棲みつきやすくするオリゴ糖を含みます。神の配剤のごとく、「乳は生命の泉」といえます。
 人乳は子どもだけでなく成人にとっても良いものかも知れませんが、横取りしては子どもが育ちませんから、人間は長い間、いろいろな生物の進化の中でミルクを作る為の家畜(ホルスタインとかジャージー等)を作り、健康に生きる為に飲んでいるというのが実情です。
ミルク(牛乳)の成分 
 ガゼインミセルの硬式図 脂肪3.7%、タンパク質3.4%、糖質4.8%、Ca120r/100ml
水分87.3%、です。タンパク質や脂肪や糖質をバランスよく含んでいる理想の食品です。
牛の乳房は4つあります。搾った乳を放っておくと浮いてくるものが乳脂肪です。
タンパク質の中でミルクのタンパク質は他の植物性食品とか動物の肉とかに比べて最高のアミノ酸バランスです。

【タンパク質】(カゼイン,約80%と乳清(ホエイ),約20%)
  カゼインはタンパク質でありながらリン(以下P)がついています。カゼインはお腹の中に入って酸で固まり、ゆっくり能率よく吸収されるようにPが付いていてCaを結合して、体の中で吸収しやすくする働きをします。タンパク補給材料ということだけでなくα、β、κの形をしているのには意味があり、カゼインミセルという構造体になっています。子ども頃は消化酵素が弱かったりするので、カゼインは一番消化がよく、分解し易いタンパク質なのです。
 また乳清中には、αラクトアルブミンとかβラクトグロブリンが存在します。αラクトアルブミンは乳糖を作るための酵素の部品で、ほとんどのミルクにあります。   
βラクトグロブリンはビタミンAを運ぶ作用があります。
他に、ラクトフェリン(鉄を含む)は免疫活性・鉄の吸収調節・抗菌作用・細胞を増殖させるなど様々な働きが確認されていて、最近では肝炎の治療にも使われています。
【乳中の生理機能物質】
乳中にはタンパク質、脂肪、糖質等の働きで、体を維持して、それがスムーズに動くために微量成分(インスリン群・副腎皮質刺激ホルモン・造血ホルモン・成長ホルモン放出因子等々)が含まれていて、子どもの成長に役立っています。
最近、ガムに虫歯予防としてCPP(カゼインホスホペプチド)が入った製品がありますが、ミルクのカゼインからつくられ、小腸でCaの吸収を促進します。
『子どもがスヤスヤ眠る』これは遺伝子で決められているとされていましたが40年前ドイツの研究者が人乳中に子どもを健やかに眠らせるものが含まれるという研究を発表しました。最近の神経科学の方面で、分ってきた事ですが、ミルク中には血圧を下げる働きやCaの吸収を促進する働きがあるという事が日本や外国の研究者が確認しています。

【糖質(炭水化物)】

大部分は乳糖で、αラクトアルブミンや酵素が関与して、ガラクトースとかグルコースなどで構成しています。Caの吸収を促進することや、他にもいろいろな働きがあるとされています。

【脂肪】

乳中には脂肪球の形で存在し、共役リノール酸という体にとってよい働きをする脂肪酸が、ミルクの脂肪に比較的に多く含まれる事が、最近分ってきました。
酪酸はミルク特有のもので、ミルクに多く含まれ、腸の蠕動作用を促進します。(バターに含有)

牛乳は健康に貢献 
戦後日本人の食生活はアメリカによって変えられてきました。アメリカからダイズ・麦が大量に輸入され、パン食が普及し、それにあう牛乳や肉の消費ものびました。これまでの植物性食品中心の伝統的な日本食と牛乳や肉とのコンビネーションがマッチして、多様化した食生活が日本人の現在の健康や平均寿命を延ばすことにつながったと私は思っています。
機能性食品とミルク 
機能性食品とミルク/表 食べ物の働きには一次機能(栄養)・二次機能(感覚)・三次機能(生態調節)があります。一次機能というのは体のエネルギーとか細胞を作る事で、二次機能は感覚機能です。三次機能は一次機能が有効に使われるように生体を調節するという意味です。私が若い頃参加していた研究の結果が、最近出てきています。従来考えられていなかった事ですが、「アレルギーとかガンとか感染症を食べ物で防ぐ事ができる」「神経系・循環器系・血圧や消化器系にも作用して順調に体が動くようにする」等、このような食べ物の新しい働きの原点には牛乳が厳然として輝いています。
牛乳由来のタンパク質ペプチドが血圧を穏やかにする。腸内細菌にヨーグルトが作用するとか、全部リストアップすると基本的にはすべてミルクが素材になっています。
従ってミルクを飲むと寿命が縮まるという嘘八百を言っている人がいますが、そんな事は絶対に信じないで下さい。
特定保健用食品 
 機能性食品を国が保健表示として認めたのが、『特定保健用食品』です。『特定保健用食品』以外に『栄養機能食品』というのが作られて、表示が認められ、一般食品と医薬品のちょうど中間にあります。しかしながら医薬品と違って、治療効果や予防効果をうたってはいけません。
 ヨーグルトは、おなかの調子を整える乳酸菌(ラクトバチルス菌、ビフィドバクテリウム菌、ストレストコッカス菌)が含まれ、牛乳を素材にした特定保健用食品であるといえます。
プロバイオティクスとは 
その原点になったのが、イリヤ・イリイチ・メチニコフという人です。第1回のノーベル賞の受賞者で、免疫学者です。ブルガリアに長寿が多いのは、ヨーグルトのおかげだという事を、100年位前に出してる人です。その後、1986年ですね、80年ぐらい経って、フラーいう人は、腸内細菌由来で、生体に作用する生菌に、プロバイオティクスという名前をつけて、世の中に出ました。いろいろな菌があって、プロバイオティクスとして認定されていて、ミルクの重要な応用の一つとして、紹介させていただきます。
腸内細菌と乳酸菌 
次はミルクと関連して、乳酸菌、腸内細菌がどういうふうに使われてきたかということで、菌の話をしたいと思います。
まず最初に、腸内細菌の話をしようと思います。人の体内には、100種類、一人当たり100兆個、1.0kgの腸内細菌が、入ってることをご存知でしょうか。主としてラクトバチルス菌とか、ビフィズス菌で我々の体と、仲良く共生して、調子を整えるのに大きな役割を果たしています。
腸内で菌がみんな仲良く存在する状態をフローラ(お花畑)といい、腸内フローラとは遺伝的な体質によって、どういうものがあるかが決まってきますし、食事や年齢とかストレスによって変化することも知られています。それから細菌はお互いの作用によって、元気であれば、免疫系を復活させたり、感染菌を排除したり、アレルギーを予防したり、消化吸収を促進する役割があることも知られております。
例えば、腸内細菌のバランスが悪化する、極端なケースは、抗生物質を飲んでいる場合に、お腹の中が、ふくれたりすることがあります。腸内細菌がいなくなっちゃうんですね、抗生物質があると。そうすると、お腹の調子が少しバランスが崩れたりします。最も腸内細菌のバランスがいいのは子どものときですね。それから、年齢を追うごとにどんどん、バランスが崩れてきます。バランスが悪化すると、アレルギーになりやすかったり、自己免疫疾患になりやすかったり、感染症になりやすかったり、癌になりやすかったりすると言われています。それと同時に、便秘になりやすかったり、動脈硬化になりやすかったりすることは、疫学的にデータが出されています。バランスを改善するためには、腸内フローラをよくしてやることで、その成分としては、やはり、乳酸菌、ヨーグルトですね。ヨーグルトを食べることは、疾病の予防治療になります。
乳酸菌のサルモネラ感染による致死率改善/表 これは動物を使った実験です。感染症を予防しますということです。発酵乳は、液体状のものや、ヨーグルト状のものがありり、食べさせたネズミと食べさせないネズミで、サルモネラ菌を感染させますと、食べさせないものはガクンと死んでしまう。しかしながら、食べさせておくと、寿命が伸びて、感染に対して抵抗性があるということが、動物で実証されたということです。人間ではなかなかこういう実験は、できないんですけれども・・・(笑)
1週間ぐらい前の朝日新聞に、TOPIX出てましたね。乳酸菌は、アレルギーに効くということで、日本で千葉大の教授が出したデータを紹介していました。アレルギーは、終戦直後の日本では、ほとんど1%以下だと言われたんですけれども、最近では、統計的にも、30%、40%くらいに増えてきています。
2001年にランセットという世界的に有名な医学雑誌に出された、スウェーデンとデンマークの研究所の共同研究で、アトピー性皮膚炎に関する論文が非常なショックを与えました。妊婦や出産後の乳幼児に、ラクトバチルス菌を経口的に与えた結果、アトピー性皮膚炎が半減した。で、これを日本人も証明した。そして朝日新聞も報告を取り上げ、発表したということです。私もランセットの報告の5年ぐらい前に、動物実験で、似たような研究をやっています。ビィフィダス菌を経口投与してやると、アレルギー症状は抑えられるということを証明しています。
毎晩ミルクを・・・カウボーイで 
最後に、そんなエラそうな事を言っている、お前はどういう食生活をしているんだという指弾をよく受けます。実は食生活に関しては、女房からいくつか指令されたものを毎朝食べております。ヨーグルト、黒大豆(オリゴ糖)、カボチャの種(亜鉛)、卵、ご飯、野菜ジュースなど、朝はプロバイオとプレバイオと野菜が中心で、免疫系を維持するような食事を365日食べています。牛乳は、毎晩飲みます。ブランディーとかスコッチとミルクを混ぜたものをカウボーイって北海道ではいうんですが、もちろんミルクだけでも飲みます。夜はミルクを飲みますから、カウボーイって形で、生活しているわけです。ご静聴ありがとうございました。
●質疑応答● 
コレステロールと牛乳

Q)同居している母が検査でコレステロールが少し高めで、お医者さんから「牛乳乳製品は減らすように」と言われた。骨粗鬆症もあるので、チーズと牛乳はずっと続けて欲しいと思っているんですが、母を説得できるかどうかを教えて下さい。

A)現在日本の循環器系の学会、コレステロール学会では、コレステロールの従来の基準があまり低すぎて、生命科学の成果を考えると、もっと高く設定した方が良いことが常識になっています。したがって、低めにしておくとうつ病になりやすいとか、いろんな病気が統計的にカウントされてきたわけですね。じつはコレステロールは、細胞膜をしっかりさせる役割があり、コレステロールがないとガタガタになってしまうわけです。一般的には卵も、少なくとも1個分くらいでのコレステロールは全然問題ないだろうし、逆にいいのではないかという流れになっています。牛乳の場合はそれよりも全然少ないので、コレステロールは全く気にする必要が無くて、むしろ体に良い方向に動くということで、現在では理解されていると思います。

生きて腸まで届く乳酸菌とは?

Q)ヨーグルトの菌の中で、ビフィズス菌などは、生きて腸まで到達しないということですが、有効ではないのでしょうか。

A)ミルクの乳酸菌は体内に届く乳酸菌と、そうでは無い乳酸菌がありますが、両方ともそれぞれ働きは違うけれども、死んでいても生きていても体に良い働きをしている、というのが現在の研究の成果です。したがって、耐酸性の乳酸菌を使う場合も十分に意味のあることですが、だからといって、死んでしまった乳酸菌が無意味ということには全くならないということです。
はちみつとミツバチについて
舘養蜂場 舘 正浩さん
大正元年創業の養蜂家で、4代目まで続くのは国内で6軒だけとなります。他の養蜂業の方は、はちみつなどの販売や問屋業を主にしており、採蜜まで行っている4代目は青森の方を含め2軒だけとなります。家は、三重県の桑名市。家族構成は父・母・妻と高校3年と2年の息子2人です。従業員はおりません。1箱に1万匹のハチがいて、1000箱・1000万匹のハチが従業員代わりのようなものです。「日本養蜂はちみつ協会」と言う、養蜂業の社団法人に9000軒の登録があり、うち移動養蜂家が2000軒くらい。(採蜜に北海道まで行く移動養蜂家は300軒)他の7000軒が兼業の方となります。
*事業内容は、
・ハチについての生産品 はちみつ、ローヤルゼリー、花粉、プロポリス、蜜蝋など全て
・ミツバチの飼育販売リース〔ハチの売買・農家への貸出し〕
 
ミツバチの様子
はちみつの採取
1月
志摩半島に移動し、越冬します。 びわ・椿が咲きミツバチの餌になります。
2月
春に向けて繁殖をします。 梅の花が咲き、蜜や花粉を巣の中に貯めます。
3月
暖かい気候のため産卵が始まります。 ビシャガキの蜜・花粉がたっぷり入り、育児の為の餌となります。
4月
桑名に戻る。ハチを分割し箱数を増やします(3万匹位に増大)。ハチの販売もします。 れんげ・からし菜が採れます。
5月
分割をして箱数をどんどん増やします。メロンの花粉交配に貸し出します。 れんげ・みかんが採れます。後半、クロガネモチ、そよごの蜜が取れます。
6月
5万匹のハチを北海道に移動します。 中旬からアカシアが採れます。
7月
巣別れをしないようはちみつを取りながらハチを管理します。 アカシアが終了、クローバー、アザミ、そば蜜が入ります。
8月
はちみつを取り終えたらハチを分割して箱数を増やします。 菩提樹(シナノ木)蜜を採ります。
9月
スズメバチの襲撃を避け十勝地方に移動します。 クローバー、萩などいろいろな蜜が入ります。
10月
スズメバチの襲撃から守るためパトロールをします。 セイタカアワダチソウの、はちみつと花粉がたっぷり入り、越冬用の餌になります。
11月
苺の花粉交配にミツバチを貸し出します。  
12月
冬支度をします。  
北海道での生活 
 舘 正浩さん 6月の10日くらいに北海道へ転出しますが、富良野の西、赤平、芦別や夕張や歌志内といった昔の炭鉱町です。7月にアカシアを採り、その後クローバー、アザミ、そばの蜜を採ります。
8月になると芦別の国有林のシナノ木(菩提樹)の蜜を取る為に山のほうに移動します。この木は樹齢30〜40年になると40mの大木になり、合板に利用されます。
酪農家は牧草と一緒にクローバーを蒔きます。7月の初めから1番花、2・3番花という形で、6月に蒔いた牧草を7月5日頃刈り、刈り取った後にまた蒔きます。その2番花が咲くのが7月の半ばまで。最終7月末の3番花という形で牧草の中にクローバーが咲きます。このクローバーは日本全国でも1番のクローバーです。
はちみつも1番です。ただ、十勝の7月は、天候も悪くガスもかかり温度も低く、その年によってすごく差が出ます。9月の初め頃までそうやって過ごし、中頃過ぎには三重県に私は戻ってきますが、11月の半ばまでは、ハチは鹿追に置いてあります。それは上士幌の十勝養蜂園という同業者が全て面倒を見てくれるからです。12月に十勝養蜂園のハチが三重に来た時には、下ろしに行くのも手伝い、2月の半ばに持ち主が出てくるまでは私が全て面倒を見ます。私達の世界というのは、心を許せる同業者を常にその土地土地に持って、自分達で助け合いながらやるというようになっています。
はちみつの特徴
現在扱っているはちみつは、レンゲ、アカシア、ミカン、高山植物、クローバーがあります。花によって全く味・風味・色・全てが違います。またはちみつの成分は、ブドウ糖と果糖ですがそれぞれのはちみつに特徴があります。

*レンゲの場合は、アルファルファゾウムシという、出たばかりの花芽を全部食いちぎってしまう虫の害の影響で、殆ど幻のはちみつみたいになっています。ブドウ糖が多く、1斗缶の状態で5℃以下、ビンに詰めると12℃くらいから結晶が始まります。私のところでは注文があった場合その都度瓶詰めをするのですが、小分けしてから結晶が早いので、理解していただきたいと思います。

*アカシアは、果糖の多いはちみつで、結晶しにくく日本では、一番メジャーになっているさっぱりした味です。
*ミカンのはちみつですが、このはちみつはそのままミカンの香り、酸味があってミカンそのままの風味が楽しめます。元来一年おきの花ということもありますが、収量が少ない原因は、農家はホルモン処理により種無しミカンを栽培しています。ミツバチが花粉受粉すると、種無しミカンに種が出来てしまうため、花の時期に虫がこないような薬を撒きます。花の盛りにハチが近づけないためはちみつが採れないということです。

*高山植物と書いているのは、北海道で取った雑草百花蜜というものです。その年によってクローバー、アザミ、ソバ、ハギ、イタドリなどいろんなものがありますが、その年に豊作であった花の香りとなり、その年によって違うというのが特徴となります。レンゲ、アカシア、ミカン、クローバーと言う花の蜜分けしたものは、何時食べても同じ味ですが、高山植物については、花の盛りの前後で混ざるので、今年はそば蜜がよかったので、黒くて癖があるとか、クローバーが多かった時は色もきれいで、味もよくなり、イタドリとかハギも味がよくなります。その年何がよかったかの説明ができるというのが採蜜している養蜂家の強みになると思います。

*はちみつの表示は、「純粋国産はちみつ」との表示が一番厳しくなりました。非加熱で生のはちみつだけ、純粋国産はちみつと表示できます。加熱や何かしら加工した場合には、国産はちみつとは表示できるが純粋とは表示できません。外国産は、中国産60%、アメリカ産40%というように原産国表示をしなければなりません。賞味期限は2年ですが、はちみつは腐りません。お届けしたときの風味、色が保てる期間となっています。
はちみつのボツリヌス菌の関係で、昭和62年に厚生省の指導内容に「1歳未満の乳幼児には与えないでください」と表示をすることになっています。ボツリヌス菌というのは、ホコリや土壌に生息している芽包菌で120℃3〜4分熱を加えないと菌は死にません。はちみつの場合120℃で3〜4分加熱すれば全ての栄養素は壊れます。純粋国産はちみつとも表示できなくなります。

*ハチの生態について説明しますが、1箱に女王バチを中心として、働きバチとオスバチで形成されているコロニーです。

*女王バチの役割として、子孫を残す事。女王バチは1日に2000くらい卵を産みます。働きバチの寿命は1ヵ月弱ですので、1日に2000匹の卵を産みながら補強していくわけです。女王バチは卵から羽化するまで約16日。その間すべてローヤルゼリーを食べます。女王バチは卵から3日で幼虫になり、幼虫になった時から、ローヤルゼリーを与えられて育ちます。女王バチと働きバチは、全く同じ有精卵です。働きバチは、卵から幼虫になって3日目まで女王バチと同じようにローヤルゼリーを与えられ、4日目からはちみつを与えられます。女王バチが羽化して10日目頃初めて空中交尾に出ます。周りのオスたちが寄ってきて交尾することによって、近親相姦を避けられます。空中交尾については、資料が全くありません。ですから、1回の交尾でOKとか何匹かと交尾するだろうとか様々です。一つ分かっているのは、1回のオスバチとの交尾で蓄えた精子を女王バチは産み付けるときにお腹の中で精子を降りかけながら産み付けるという事です。春、風が無く15℃以上の天気のいいときに交尾しますが、3月4月にそういう日が少なかった年というのは、産み疲れしてきて途中産まなくなる女王バチが出てくることがあります。寿命は5年くらいあります。長寿の理由は、外に出ないということと羽化するまでも巣の中でも、常にローヤルゼリーを食べているということです。

*働きバチは有精卵でメスです。卵から羽化するまで21日かかり、羽化してから初めの10日間ぐらいは、巣(箱)の中からは一切出ません。仕事としては、幼虫に餌を与えることと、女王バチにローヤルゼリーを与えること。寒い日には団子になって熱を出し、幼虫を守ります。次の10日間は、多少箱の入口に近づき、箱の中の温度管理をします。箱の中が暑い時は、入口で羽を震わせて扇風機代わりをするとか、寒い時には、入口の前にズラリと並んで、外の風を入れないようにします。あとは箱の中のゴミを外に出すなどが当分の仕事です。最後の10日間だけ外に出てはちみつや花粉を集めてくる外勤という事です。1回に採ってくるはちみつは爪楊枝の先程度で、10日間に1匹が取ってくるはちみつの量は、小さじ1杯程度です。また、最後の10日を外勤に出るには、大きな理由があります。最終的に死ぬのは外で死ぬということです。ミツバチは箱の中で死んでそこに菌を寄せ付けると言う事は絶対にしません。

*オスバチは、無精卵です。巣房により大・小の六角形があり、女王バチは巣房の大きさに合わせて、有精卵と無精卵を産み分けていきます。小さい巣房には働きバチ、大きな巣房には無精卵のオスバチを産むという習性です。オスバチの仕事は女王バチとの交尾だけです。餌も採りません。全て働きバチから与えられます。春の繁殖が終わって花が無くなれば、働きバチから噛み殺されて外に放り出されるというのが、オスバチの運命です。大体、1箱2000匹のうち、200〜300匹のオスバチがいますが、その中の1匹だけが女王バチと交尾でき、交尾できないものは、そのまま息耐えていくというのがオスバチの一生です。

*天敵には、スズメバチとかクマバチとかいますが、箱の中に
ミツバチヘリイタダニというダニがわくことがあります。法定伝染病に指定されているフソ病で、家畜保健所の証明書が必要になります。この病気が発生すると、移動停止のうえ、箱から 器具それから半径3km以内にいるハチも全て焼却処分になり  ます。ハチを置いている場所の土壌消毒も保健所が全て行ないます。ミツバチヘリイタダニとフソ病について、日本の養蜂家は薬による防除を行ないます。抗生物質の残留はない厚生省認可の薬です。容量、用法を守らないとデータ上にでますので、その基準値もすべてクリアされた状態でロットごとの検査、採蜜時期、方法すべてに管理能力が問われています。

輸入はちみつと国産はちみつの違いについて
 やまゆり
はちの巣箱 
ハチの群数についてお話します。1箱が女王バチ1匹に対し働きバチ、オスバチ全て含んだものを1群とします。中国は9000万群。アメリカは300万群、日本は20万群。はちみつの世界全生産量は、120万tです。中国20万t強、アメリカ20万t弱、アルゼンチン10万t、日本の国内生産3000tですから、中国の1/7ということで、生産量でも太刀打ちできません。日本国内への輸入は、4万5千tです。中国輸出量8万tのうち、中国の輸出量の半分以上4万2千tが日本にやってくるという状態です。
はちみつは昭和38年に輸入自由化になりました。そのころ砂糖が無い時代ではちみつ1斗缶は1万円したそうです。自由化により、一気に相場が下がり1万円が2千円くらいになってしまいました。当時、外国産のはちみつには「はちみつ」としか明記してありませんでした。
外国の場合、アメリカなど特にそうだが、1年中1箇所に10段くらい巣箱を重ね上げておき、たまったはちみつを1年に1回だけ工場で収穫するかたちです。1年分のはちみつが1つの箱にたまっているのですから、種類分けできるはちみつはありません。日本のはちみつは、レンゲ、ミカン、アカシア、トチ、シナ蜜というように花から花へ移動し、種類分けできるはちみつが採れます。自由化で安いはちみつが輸入されますが、国産とはしっかり区別ができます。
中国はちみつとの違いですが、高品質なものや糖度の高いものを採るという意識がありません。高品質なはちみつに付加価値があることを伝えたら生産者も向上するのでしょうが、日本から指導にいく業者もハチの事を何にも知らない者が教えているので何ともならないのが現状です。
アカシアの特定外来生物への指定 
平成16年6月に制定され、日本固有の動植物を負かしてしまう恐れのあるものに関して規制しようという法律です。制定時選考されたものでは、ブラックバス、カミツキガメ、セイタカアワダチソウなどがあります。その中に、蜜源植物であるアカシアも選考に挙げられています。アカシアは、130年位前に秋田の小阪鉱山が閉山になり、鉱山の土砂崩れを防ぐために植えられました。10年で5~6mぐらいになります。またすごく良く根がはって、根から増えていく植物です。秋田の小阪ではアカシア祭りが開かれたり、北海道の札幌でも街路樹全てにアカシアが使われています。日本に入ってきて130年も経ち、日本の植物であると思われているくらい身近な植物です。土地の浄化や、食料資源、資源樹木、環境修復樹木、空気浄化、土壌の浄化、水の浄化などの効果があるといわれます。しかし、外来生物に指定されれば全て伐採されてしまい、小阪の山や北海道の夕張から三笠、岩見沢あたりも全て坊主になるのが現状です。
 やまゆり
美味しいはちみつの試食 
はちみつの中でアカシアは全体の5割を占めます。後は百花蜜が3割、クーバーが1割、レンゲとミカンを合わせて1割程度。アカシアの花が無くなれば、私のはちみつ生産量の5割はなくなります。ポリネーションの時期ですとイチゴ、ナシ、サクランボ、メロン、キュウリ、ダイコン、ブロッコリーなどハチが受粉します。昔はホルモン剤を使用していました。そのミツバチの生産物の5割が、アカシアとともに無くなり、養蜂家の半分は廃業すると思います。そうなれば、ミツバチの製造もできなくなります。この点を日本はちみつ養蜂協会という団体で、「アカシアを守る会」として今年の春から協会として動き、パンフレットを配ったり、小阪町のアカシア祭りに皆で行ったりなどの運動をしています。

*農薬問題 はちみつ・ハチ自体に関係する全ての農薬問題については、稲の害虫のカメムシに効く農薬があり、水田地帯に下りるミツバチは殆ど全国的に被害にあっています。ミツバチが農薬にかかり箱に帰ってきますが、薬が付いていてもハチはすぐには死なず、体についた農薬の効き目が1〜2ヶ月間残り箱の中に蔓延してしまう。大型のヘリコプターでの散布の際は事前連絡があるが、リモコンヘリで飛ぶときは連絡がきません。ピンポイントで撒けば、人体に影響がないということで濃度の高いものを撒く。畔の部分が一番農薬が濃く散布され、ミツバチの習性で畔にしみこんでいる水を吸うため、一番被害をこうむることになります。

*熊との戦い それから、養蜂家はずっと熊との戦いです。私も何度かヒグマと会っています。罠にかかっても人間に悪さしないものは山に返します。熊は行動半径30kmくらいあるため、ハチミツの味を覚えていると戻ってきてしまい、人間が被害を与えられれば殺され駆除されるが、ハチが被害を受けても駆除されません。国有林は熊の巣です。夜入ったら、そこいら中からうなり声がします。国有林に入る場合にはハチを囲いますし、移動するときは夜なので、車のエンジンはかけっぱなしにしますし、ラジオのボリュームは一杯にします。初めに爆竹を鳴らしてからでないと、降りられない状態です。

*高齢化 後は、高齢化の問題です。日本の養蜂家の平均年齢は、65歳くらいです。岐阜の方で86歳の方で、北海道まで自分でハチを運んで行く方もいます。私は43歳ですが、私の年代40歳代が一番少ないです。東海地区(愛知、岐阜、三重)の養蜂家でも30代40代弱のものが30軒位います。そこで、10年前に青年部を立ち上げて、次の時代を担っていかなければいけないということで活動しています。そういう点で、今残っている人間に関しては、全てこだわりを持ってやっていると思っています。
結局はハチにはちみつを頂いているということで、ハチを育てて皆さんに良質なはちみつを届けさせてもらうのが私の使命だと思っています。

大豆トラストの大豆&椎茸の生産者
06・11・20 (天白) 西尾勝治さん/岐阜県白川町黒川在住
私は30数年前、高校の理科の先生をやっていました。退学させたくはなかったのですが退学者を出して、教師失格ですね。教育能力に疑問をもち、辞めて名古屋で働いていたのですが、父母の高齢化で地元に帰ったんです。3人の娘を大学まで卒業させるため、勤めながら農業もする第二種兼業農林家で10数年。子どもの自立の見通しが立ち、専業農林家になって7年経ったばかりです。
美濃白川町の黒川は標高500〜800m位で、夏は非常に涼しく、扇風機も一番暑い時期の1〜2週間要るだけ。但し、冬は−15℃位になる時もあります。白川茶でも有名ですし、国内ではここでしかない麦飯石(水を浄化する効能を持った石)も採れます。米やトマト作りにと、麦飯石を使った農業をやろうかと手掛けています。
椎茸栽培について 
 しいたけほだ木 一般的に栽培方法には、近年増えてきた 菌床栽培 と昔ながらの 原木栽培 があります。
菌床栽培 はおが屑を固めて、殺菌剤などの薬剤を注入して、水分と温度をかけてやりますと、翌日位から椎茸が発生し出来るものです。丸くコロコロした感じで、スーパー、レストランでは多いですね。薬がいろいろ入っているから私は食べませんけど。
原木栽培 には2種類あります。@ 施設栽培 はナラ等の原木を使うんですが、菌の種類が違うんです。椎茸は春と秋しか出ないものですが、市場の需要に合せなければいけないので、2週間位で発生する夏菌を使うと年3〜4回出てきます。ハウスの中で浸水処理(冷水に薬剤を添加)して、発生を良くするケースもあります。自然栽培に比べて形も小さく、肉も薄くなります。
A 自然栽培 は椎茸の原種に一番近い冬菌を使います。植菌した原木を桧林の中で井桁に組んでおきます。2年目位から発生し始め、春が大部分で秋は少しです。肉厚で大型です。春の椎茸を皆さんに食べて頂ければ味がよく分かると思うんですが、残念ながらいつ出るか分らなくて、乾燥に回してしまいます。
トラスト活動−消費者と共に 
大豆畑トラストを始めたのは8年位前で、消費者の皆さんが「遺伝子組み換え大豆が入ってきそうだ、しかも生産農家は少ない。何とか大豆を作って欲しい」との要請を受けて、作ったわけです。
トラストの仕組みは、5坪を一口として、そこでその年に採れた大豆を出資した方にお分けします。私どもの所では「福鉄砲」という大粒で味が良い品種を扱っています。これは地域特性がありまして、他所に持っていくと実らないんですね。粒がどんどん小さくなったり、細くなったり。町内に「中鉄砲」という品種はあったんですが、生産者の一人がちょっと変わった大粒の豆を持っていて、使ってみたら美味しくて良かったので特有の品種にしようと。持ち主が福代さんという方だったので、福代さんが持っている「中鉄砲」という事で、「福鉄砲」と勝手に名付けたのです。もちろん有機・無農薬で栽培しています。
さて、名古屋の若いグループに「はさ掛け米を作って欲しい」と言われ、今年から「はさ掛けトラスト」も始めました。米より稲わらが目的で、ストローベールハウスといって稲わらを使った住宅の壁を作りたいからだそうです。自然環境にも優しいし、断熱効果も非常に高いとの事です。


次世代に
 やまゆり 山村文化と環境を守るという形でやってきたんですけど・・・。例えば、30〜40年前、同時期に植林した山なんですが、片方は植えっ放しで、下草が生えて来ない。木の根元がどんどん雨で洗われてしまって、根っこが剥き出しになりつつある。土を洗ってしまい、川の濁流が起こるわけです。私の山は間伐を何回か繰り返したので、きちんと水を保持している。森林のダム効果といわれていますが、問題となっています。何とかしないと水源用の水が無くなってしまう情況になっていくと思います。
木を植えっ放しは光が入らないので昔からあった植物も育たないんです。「ササユリ」も沢山咲いていたのですが、今は僅かになっています。3、4年前に私の山の一部を間伐したら、直に生えてきたんです。300坪に60〜80本咲いて、非常に気持ちの良い空間ができ間伐して良かったと感じました。これからもそういう山が増えるようにしていきたいと思っています。
自然保護に関して、我々と都会の人たちの考え方に違いがあるのではないかと思うのですが、日本福祉大学の富山和子先生は我々の活動に対して次のように理解を示してくれています。「緑を守る事は、人間が手を触れぬこと。農業とか林業自体が破壊であるとして、『木を切るな、道を付けるな』と注文するが、そうした中で山村の人達は林業の意欲を失い、山仕事を放棄しています。木材は外材に圧され売れず、林業は駆逐され農山村には後継ぎはいません。このままでは日本の森林は守り手を失って、いずれ本当に崩壊します。」
 何故私がわざわざ不便な所に住んでいるかというと、親から引き継いだからしょうがないと思っています。が、ある意味農村を守っていかないと日本全体が駄目になってしまうんじゃないかと・・・。大袈裟なんですけど、若い者が都会に出て行ってしまうと、どんどん過疎化が進んで、高齢化してしまう。少しでも若い人たちに帰ってきて欲しい。来年、「はさ掛けトラスト」の若いグループが村に入ってくるんですね。そういう若い人たちに何とかつなげていけるように、きれいな山とか風景を守っていく事が使命だと思いながら、山林複合経営の農家をやっています。
質問 
1/大豆トラストについて詳しく教えて下さい。

答え/畑5坪を一口として加入申込みして下さい。年間2500円の会費(郵便振替)です。その内1600円は生産者に、残りは発送や通信「まめばたけ」(年4回発行)の費用になります。メニューは大豆・枝豆・スイートコーン。大豆は生産者・品種も選べます。大豆は1月末に5坪の畑で採れた分を送ります。枝豆は10月上旬ころです。
年3回、美味しいものを一緒に作ったり、収穫祭をやったり、生産者と消費者の交流会もあります。夏は特に地元の歌舞伎小屋で、素麺流しやアマゴの掴み取りをしたり、涼しくて気持ちが良いからお子さん連れで毎年来る方もいます。案内は通信「まめばたけ」でださせていただいてます。
今年は、大豆トラストを始めて8年になりますが、一番良く出来たかなと思います。
※ 未来ネットのおたよりの中に大豆トラスト募集のチラシが4月頃入ります。詳しく知りたい方は、その段階で連絡いただければ、生産者の顔写真の載った詳しい冊子をお送りいたします。

2/椎茸の乾燥は天日干しではないのですか。

答え/椎茸は4月の中旬頃に一遍に出てしまうのです。私も天然乾燥でやりたいところなんですが、やっているところから他の椎茸がどんどん腐ってしまうので、乾燥機で2昼夜完全乾燥します。乾燥が完全でない天日干しはどうしても湿気があり、梅雨の頃になると虫が入りくちゃくちゃになってしまうんです。きちんとした乾燥は虫が入っても殺してしまいますので、1年保管しておけます。



地粉うどんの小麦生産者
06・11・6 (ライフポートとよはし) 鈴木晋二さん/宝飯郡音羽町在住
「こだわり農場」のはじまり 
 小麦畑 小麦を始めて5年位でまだ苦労が多いのですが、今年の2月に「こだわり農園」を設立しました。農家の跡継ぎでないと農業をなかなかやっていけないので、農業法人にしました。仕事としては米と麦・大豆を生産販売しています。働き手のない他の農家の田植え・稲刈りの作業をして作業料金をもらったり、米の乾燥・調整等もしています。米はほぼ直売形式をとって、生協とか飲食店等に卸しています。
きっかけは平成元年に音羽農業研究会の伊藤さん(消費者)が来られて「地域ぐるみで農薬を減らす事は出来ないか?例えば1人の農業者が5つ減らすよりも、100人の農業者が1つの農薬を減らせば100の農薬が減らせる。」それに共感して、特別栽培米制度を使って、生産者と消費者と顔の見える関係を作ろうという事になりました。昔は生産者が直接米を消費者に売れず、政府が買って管理しそれを消費者が買うという形でした。どんなにいいものを作っても価格が同じで、生産者の意欲もなくなる。米の消費低迷や、消費者のニーズが広がって、直接やりとりできる特別栽培米制度で、2人で年間50俵の計画で音羽米を始めました。
当時は機械を使って農薬を一斉に撒いていましたが、その作業をやめようという事になったのです。農協から農薬の購買実績が減るのは困るというプレッシャーをかけられましたが、地域住民に散布はよく思われてないということもありましたし、音羽地区のような中山間地で生産して行くには農薬を減らすしかないと決断。現在、生産者は130人、2,500俵で、音羽町の耕作面積の約半分でやっています。20年前は伊藤さんの言うエコロジーとか有機栽培・低農薬が理解出来ませんでしたが、今ではかなり農薬を減らせたと思っています。
音羽米は、「甘みがある。もちもちしている。冷めてもおいしい」という評価を受けています。米は窒素肥料をやるタイミングで食味がかなり変わります。農業普及員を中心に皆で指針を作り130人同じ栽培方法です。地域ぐるみで成功しているのは愛知県ではここと知多だけと聞いています。農薬の成分は、始めた頃は17成分あったのが今は4成分になっています。回数表示だけでは濃度も、散布時期も分かりません。音羽米の場合、初期に1回だけでその後一切かけませんが、例えば収穫1ヶ月前に散布すると残留する可能性があります。買うときにいつ何をどの位の濃度かがわかる成分表示になると本当の目安になると思います。
音羽米活動
 学校での講演風景

 現在、音羽町の保育園の給食の米は園からの要請で全て音羽米です。過去10年、食育活動に参加という事で小中学生に農業生産を体験させる総合学習の講師で町内の学校へ行っています。今の子は知識はたくさんあり、例えば「頂きます」という言葉は、命を頂くという意味であるということを学習しています。しかし、昔ながらの除草作業を体験させたところ、うまくいかず最後は泥の投げあいになりましたが、田んぼに入った感覚とか臭いを覚えておいてくれたらと感じました。最近、鹿とか猿が田んぼを荒らすので、青年会で網を立てて防御しています。この様に色々な活動をしてきているのですが、次から次へ問題が起きてきます。
平成12年に愛知県農業試験場で遺伝子組み換えラウンドアップ耐性稲の育苗実験が行われました。これに普及所の人からなんとか反対の声を上げてくれないかと頼まれてびっくりしました。よりによって愛知県で除草剤をかけても枯れない稲を育苗している。未来ネットや各生協とともに反対の署名運動やシュマイザーさんの講演会等を開いたりしました。結果、県試験場での実験は中止になりました。これは自分として市民活動ではじめての勝利ではないかと思います。このニュースは全世界に伝わって、グリンピースの招きでタイでの講演会に出向きました。

産業廃棄物の問題では、不審な場所を掘り起こしにも行きました。水源を含め音羽米を守るために何かあれば調査するという姿勢を貫いています。 
音羽米のテーマに「農業と福祉を結ぶ生活」があり、授産所で米と小麦を加工してポン菓子等を生産販売しています。これからは高齢化が進む中、意識のある若者が中心となって除草剤なしの方向で地域を盛り上げて行こうと考えています。
日本の小麦
食料自給率がかなり問題になってきています。昭和40年代は73%あったのが、平成10年には40%に。食の嗜好が変わって、麦を中心とした麺類やパンが食卓のメインになってきたのに、生産が追いつかず外国産小麦を使用したのが、かなり影響したと思います。そこで、水田を如何に維持していくか。米ではなく、大豆や麦をという事で転作小麦の栽培が始まりました。こだわり農場の栽培方法ですが、地域を3ブロックに分けて1年目は水田、2年目は小麦を6月まで、7月から12月まで大豆をつくり、翌年にはまた水田に戻すというブロックローテーションを組んでいます。転作小麦の利点としては田んぼの後に蒔くので草が生えにくい、1回リセットされているので病気になりにくい、大豆と連作が可能。稲作農家として年中収入があるので、大変いい栽培方法です。
小麦の品種は、薄力・中力・強力粉とありますが、国産では薄力に対応する品種はまだ研究段階なので、中力を削って作ります。中力は「農林」とか「ホクシン」が中心で、強力は「春よこい」があります。こだわり農場では「農林61号」を栽培しています。小麦の花が咲く頃に一番感染しやすいのが赤カビ病です。梅雨の時期が収穫になるので発生しやすくなり、これを抑える為の薬は発生したら使用を余儀なくされます。国の安全基準が示されて通称DONといった検査があり、これに合格しないと出荷できないので、赤カビを発生しないように気を使って栽培しています。
未来ネットの地粉うどんは、地元で育てた小麦を当地で製粉・製麺、そして皆さんが食する。小麦は1粒たりとも遠くに行っていない。いい製品になっていると思います。外国産はポストハーベスト農薬(収穫後に虫が発生しない様に有機リン系の薬剤を直接かけている)の問題があります。特に安い外国産から検出されていますが、学校給食にはかなり入っているのではないかと指摘されています。その為、玄麦ごと挽く全粒粉はほとんど国産です。これからも国産の粉を使う意味が分かると思います。
小麦栽培のこれから
 小麦の花

新品種の「祝いの大地」を今注目しています。まだ正式にはたくさん作れないのですが、コシがあって食感もいい、見た目もそれ自体白い。他にもうどん用やパン用の品種も出てきています。これらを使った商品展開や提案ができたらと思っています。今後も色々問題が出てくると思いますが1歩ずつ栽培技術を上げて小麦生産をしたいと思っております。


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