総会報告

 2016年 第40回定期総会報告
    ★来賓挨拶 村上裕之さん(ホクレン名古屋支店長)
★議事  前年度報告・会計報告・新年度予定・新年度予算案・新年度役員・常任委員全て承認されました。
★生産者のお話@ 酪農家 川本純一郎さんのお話  
★生産者のお話A 大山酪農農協組合長 幅田さんのお話 
 
来賓挨拶 
 私は今年の2月に帯広から名古屋に転勤してまいりました。この第40回という記念すべき総会にお招きいただき、節目の年に立ち会えることを大変うれしく思っております。
共同購入会が数々の困難を乗り越え、未来へ安心安全な食と環境を守り受け継いでいく、という理念に基づいて成果を上げ続けていることに、心から敬意を表します。
 40年前には、ロッキード事件という世界的な汚職事件がありました。また、ヤマト運輸が営業を始め、歌謡曲では泳げたいやき君が大ヒット、北海道の定番のお土産の白い恋人も、この年に誕生しております。こういったことを考えますと、未来ネット様の歴史の長さをヒシヒシと感じる所です。
 
村上裕之さん
(ホクレン名古屋支店長)
この1976年の北海道の酪農に目を向けますと、札幌を中心とした酪農専門農協のサツラク農協が指定生乳生産者団体から完全に抜け、アウトサイダーになりました。それまでサツラク農協は、自分の市乳工場で牛乳を作り、処理しきれない分を指定団体に委託しており、問題となっていました。
北海道ではホクレンが指定されていますが、生乳生産者団体は、安定的な生乳の需給調整を担っておりますが、今年の3月に規制改革会議の農業ワーキンググループが指定制度廃止を唱えた提言をまとめました。北海道の生産者代表による会議で到底受け入れられるものではないと、特別決議を採択し中央に要請。また自民党も制度廃止は受け入れられないとしていますが、最終的にどう閣議決定されるか予断を許さない状況にあります。この他にも、TPPの大筋合意や改正農協法の施行など、酪農を取り巻く環境は過去になかった程、厳しいものになっています。
このような環境では後継者に経営を背負わせるのが心配。あるいは老朽化した施設に、新たな投資に踏み切れないと経営を止める方も少なくありません。
北海道の酪農家戸数は、20年前と比べるとほぼ半数の6千戸を切っている状況です。戸数は減っておりますが、大型法人設立などによって一戸当たりの集荷乳量は増え、27年度の北海道全体の牛乳生産量は平年比で102%と2%伸びております。しかしながら、先ほど申し上げました先行きの不透明感に加え、仔牛価格の上昇や労働力不足など、生産者は多くの課題をかかえております。ホクレンの使命として不安を払拭し、生産者には安心して生産をしていただき、皆様にしっかりと供給してまいります。生産する側も消費する側も、不安を感じる不確かな世の中です。だからこそ作り手の顔が見える、安心で安全な商品が望まれます。皆様の活動は、今の時代にまさに強く必要とされるものです。
ホクレンとしてもさらに努力、安心安全な商品をお届けできるよう取り組んでまいりますので、41年目、42年目、さらにその後も、ずっとお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。
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生産者のお話 @

《飼料自給率の向上を目指して》

RIVERS ファームの取り組み

鳥取で酪農をしている川本といいます。
普通高校を卒業して県立の農業大学校で2年間農業の勉強をして酪農家になるスタートを初めて切りました。卒業後に2年間アメリカで実習をし、22歳で家に帰って就農しました。現在は結婚して12年目になり、3人の子どもに恵まれています。
 
酪農家 川本潤一郎さん
     

  ◆私の牧場◆
 私の牧場は鳥取県の中央に位置する琴浦町、大山乳業の工場から5分もかからないところにあります。私で3代目となり、父から経営を平成23年に引き継ぎ、現在就農して13年目になります。
経産牛を40頭、育成牛(若牛)を25頭飼っております。出荷乳量は1日約1トン、年間350トンです。
 毎日の作業は母と二人で行っています。父は酪農家の代表として町議会の議員で、時間があれば家の手伝いなどをしてくれます。
朝は4時半に牛舎に入り、掃除や餌やりをして6時から1時間半かけて搾乳を行います。その後、また餌やりや掃除をして、大体8時半に朝の仕事が終わります。
日中は自給飼料を作っていますので、約15ヘクタールの管理と収穫作業があります。
夕方は15時半から牛舎の作業にかかります。朝と同じように餌やりや掃除をして17時から搾乳をし、その後、餌やりや掃除をして、19時半に1日の仕事がだいたい終わります。
牛は習慣性の動物なので、毎日同じ時間に餌をやって同じ時間に搾乳をしてやるのがベストなのです。1頭ずつの牛の名前と分娩月日や受精日を記入している繁殖ボードや、毎日の作業内容をパソコンなど使って管理しています。
・・・育成牛・・・
 自家育成にもこだわっています。遺伝的な改良を進めることで、1頭当たりの乳量や乳成分を高くすることができます。ふつうは白黒ですが、遺伝的な改良で赤白のホルスタインもでることがあります。同じ白い牛乳が出ますのでご安心ください。(笑)
10年前になりますが、5年に1度の乳牛のオリンピックが栃木県で開催されました。鳥取県の枠は4頭と非常に激戦で、そのうちの1頭が私の牧場から選ばれ、結果、4頭中最も良い成績となり、その後の自家育成にも力が入りました。現在はその牛の娘や孫たちが私の牧場の中心となって活躍してくれています。
・・・環境改善・・・
 牛は暑さにとても弱い動物で、健康に飼うためには環境を整えることがやはり大切です。この遮熱塗料を塗る前は、牛舎の中の温度が高い時には35℃を超えることもありましたが、改善後は牛舎内に入ると、涼しいと感じることもでき、30℃を超えることが少なくなって、乳量も落ちることはありません。

     
◆飼料のこと◆
 大きく分けて、粗飼料と濃厚飼料になります。40頭分作りますので、1回に約1.5トンの餌の量を作ります。今の牛は能力が高いので、やはり牛を健康に飼うためには、濃厚飼料も必要不可欠なのです。特に私は自給粗飼料にこだわっています。健土・健草・健牛という言葉がありますが、循環型の酪農を実施して行くためにはどれ一つ欠けてもいけません。
これから収穫作業がピークをむかえて、体力的にもきつい時期になってきます。粗飼料メニューですがほぼ自給粗飼料でやっています。県内のだいたいの平均が45%と聞いていますので、私のところは、かなり高い方です。
 拘っている自給飼料ですが、自給飼料に自家製の乳酸菌を添加して発酵スピードが上がり良質な飼料ができます。乳酸菌の作り方はお酢と砂糖はぬるま湯に混ぜて、これから収穫する牧草をネットに入れて3日間漬ければ、結構な菌が増えて簡単に作れます。
・・・牧草収穫・・・
4月の下旬に牧草を収穫した時の映像です。日中の気温が25℃以下なら1日目にまず草刈りをし、次の日に草を広げて乾燥させ、3日目に収穫を行います。25℃以上になってくれば、2日間で収穫をします。保存のために、水分が60%台で収穫するようにして、年間400個ぐらい作ります。
 だいたい9月の下旬から10月中旬にかけて牧草の種まきを行います。今年は結構天気が続いたので、適期に収穫ができました。天気予報が急変すると夜中まで作業することもあります。
・・・トウモロコシの収穫・・・
 草は個人でしていますが、トウモロコシは13軒の共同で行っています。草を収穫したあと、5月の下旬から6月中旬にかけてトウモロコシの種まきをします。8月の盆前くらいから10月の下旬ぐらいまで収穫がかかります。ダンプの方に積んだトウモロコシを牛舎近くにある貯蔵庫に持って帰って、トラクターなどの重機で踏んで転圧をしてそのあと密封して保存します。
・・・飼料稲への取組み・・・
近年国産粗飼料として飼料稲が普及してきました。飼料稲はイネホールクロップサイレージ(稲WCS:稲発酵粗飼料)と飼料米に分けられます。粗飼料と飼料用として利用するために、残留農薬については厳格な基準があり、それをきちんと守って生産していただいています。
稲WCSは、実をつけたまま収穫して発酵させて給与するために栄養価も高く、牛の飼料として見直されています。利用当初は、刈り取りステージであったり品質が結構安定していなかったので中々酪農家も使うことが出来ませんでしたが、大山乳業の斡旋により、年々利用者が増加しています。今年は利用者の増加に、生産が追い付いていないような状況だと聞いております。組合長の方にも飼料稲生産者として頑張っていただいております。
 鳥取県の補助事業を活用して、飼料米を穀類の代わりに使った飼料を給与する試験を1年近く実施しました。今まで使っていた飼料との差はあまり感じませんでしたが、何より国産の飼料なので安心して牛に与えることができています。
 飼料米はペレットに練りこんであり、見た目では分かりません。また、試験の一環で血液検査などをしましたが、全く異常がありませんでしたし、乳量や乳成分にも影響はありませんでした。
 飼料米の試験は残念ながら今年の6月で終了します。補助金が終わってしまうということで、飼料としてはかなり高いため利用を続けるのは現時点では難しいと考えています。しかし、稲WCSについては、今後も利用を継続していきます。
◆新しい試み◆
 今年、国の事業を使って私の牧場は大きな変革を迎えます。牛舎を増改築して規模拡大をする予定です。厳しい時代ではありますが、私たちも夢を持って次の世代へとしっかりつなげていきたいと思っていますので、どうかこれからも大山乳業をどうぞよろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
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生産者のお話 A

《 TPPで我が国の農業に大きな影響が 》


幅田さん
(大山乳業農協組合長)
 《 関税で守られる乳製品 》

今、問題のTPPについて我々がどのように考えているかを少しお話しさせて頂きます。
 TPP協定に我が国が参加したのが2013年で、原則、関税をゼロにするという事で、そうなれば、我が国の農業は大きな影響を受けます。
特に乳製品は関税でかなり保護されている訳で、関税がゼロになれば、当時の農水省では、北海道の乳製品が海外との競争にさらされてダメージを受け、北海道の乳製品が都府県に回ると、都府県の酪農家は壊滅し、半分位に生産が落ち込むというショッキングな試算が出していた訳です。 
《 秘密交渉のTPP 》
 その後交渉が進められたのですが、交渉経過が明らかにされない、秘密交渉という特徴があり、我々は非常にやきもきした訳であります。昨年10月に大筋合意して、合意内容が明らかになった訳です。農業関係だけでも当初、政府は重要5品目は絶対に守ると言っていたのですが、残念ながら重要5品目の関税削減、枠の拡大になってしまいました。今回のTPP交渉は関税ばかりでなく、それ以外の事でも、21分野と言われています。中でも食の安全の問題とか、あるいは保険の問題とか我々国民にとって大きな影響のあるのがTPP協定です。
《 乳製品の場合 》

 その中で、乳製品の話を少ししますと、脱脂粉乳・バターですが、今までも毎年カレントアクセスといって、生乳で13万7千tの輸入義務があった訳です。これについては税率が設定されておりますが、今回は合意の中で新たにTPP枠として、生乳換算で6万t、6年目からは7万tの枠が更に増やされた。これはバター不足が一昨年、昨年とあって、その中で実質的には2014年は18万t余り、2015年は15万tの輸入した訳ですので、その量からみれば半分程度でという事です。
当面大きな影響はなくても、いずれ関税も段々下がってきますので、影響はじわじわと出てくるのではと思っています。
 たとえば、ホエイという牛乳の脂肪を除いたタンパクがあって、非常に量が多い訳ですが、ホエイの関税も21年までに全廃される事になっています。
 我が国の乳製品の自給にも非常に大きな影響があると思います。一つはチーズですでにかなり輸入されていますが、わが国でも段々需要が増えている中で、国産チーズを作ろうという動きがありました。残念ながら今回の合意の中で、チェダーとかゴーダのような熟成チーズについては16年目までに関税は0になり、海外の安いチーズが入ってきて影響を受けます。
 酪農関係以外に牛肉も我々に関係がありますが、牛肉の関税もかなり引き下げられ、我が国の肉の市場に海外の安い肉が入ってくる事によって影響を受けます。特に酪農家で生まれる雄牛の肉の価格に影響が出るのではないかと懸念され、酪農家の副産物収入が大きく減るという事になります。

《 農産物全体で1兆円を超える損失 》

 今回の合意で農林水産省も我が国の農産物がどれ位の影響が出るかという試算を出していますが、当初の2013年頃の試算とは大きく異なり、非常に影響が少ないという試算値を出しています。米の場合は0、牛乳・乳製品は198〜291億円で、品目によって違いますが、農産物全体としては878〜1516億円の生産減と見込まれています。それと林業とか水産を含めると1300〜2100億円の生産減という見方があります。一方、東京大学の鈴木宣弘先生は、TPPに反対という論陣を張っておられる先生ですが、米も1197億円、牛乳・乳製品は972億円と、ほぼ一千億円位の生産が落ち込むという事で、率にすると14%余り、それぞれ影響があると試算されています。農産物全体でも1兆2600億円、林産を含めると1兆6000億円近い生産減となる試算もされており、実際はどうなるか、非常に気がかりです。  こうしたTPPの大筋合意を受けて、政府は生産コストを下げるとか、我が国のいろいろな良い物を輸出するとか、政策を打ち出しています。生産費がかさんで、収益が悪くなった時の所得補償なども打ち出していますが、影響を少なく見てある訳ですから、その対策が非常に不十分であると思っています。
 我が国の酪農がこの3〜4年、非常に生産が落ちてきて、バター不足という事態もあった訳ですが、餌高という事もありますが、もう一つの原因としては、TPP交渉がどうなるかという将来に対する不安があった為に酪農家の皆さんが新たな投資を控えるという事が実際にあった訳です。今回の大筋合意によって酪農家の皆さんの生産意欲が落ち込んでしまっては、本当に我が国の酪農が衰退してしまうと懸念しています。
 これから我が国の国内手続きとして批准する訳ですが、参議院選挙の前には具合が悪いという事で、担当大臣も替え、批准については、今国会では見送るという事であります。アメリカも大統領選挙でかなりの候補者が反対を唱えています。反対の
理由は我が国とは違いますが、いずれにしても各国とも批准手続きにいろいろ紆余曲折があろうかと思っています。
  我々としては、今回の合意内容を明らかにしてもらわないと不安でかなわない、蓋を開けてみると「そんな話ではなかった」という事では困る訳です。一番懸念しているのはISD条項というのがあって、海外の企業が輸出しようとする国のいろいろな規制で不利益を受けた場合、訴えられて損害賠償を求められるという事があります。先ほど遺伝子組換え表示の問題、成長ホルモン問題等々、我が国での規制が賠償の対象となる事も今後は考えられる事です。TPPは本当に怖い仕組みだと思います。
 もう一つは協定が発効して、7年後に再協議という要求があれば再協議するという事があり、もっと厳しい要求が出る事も十分考えられます。一旦、この協定に参加してしまったら、後戻りできない協定であり、我々はその批准を慎重にするよう要求しながら取り組んでいかなければならないと思っています。

《 次世代の酪農を一緒に守って下さい! 》

  特に川本さんのような若い酪農家の皆さんがうちの組合にも何人かおりますが、こうした若い生産者が本当に意欲を持って今後酪農に取組んでもらえるようにしなければ、日本全体も本当に酪農がなくなり、牛乳の需要を満たせなくなります。 酪農家は全国でも2万戸を切っています。1万6000戸とも1万7000戸という風にも言われて、数では非常に少ない訳です。
我々の思い、我々の訴えを国に届けるのは、利用して頂いている国民の皆さん、消費者の皆さんが酪農に対して理解して頂き、我が国の農産物、牛乳、乳製品は国産を守るべきだという声を一緒になって上げて頂くことが非常に大事だという風に思っています。TPPは農業問題ばかりではないとしっかり認識して頂いて、今後ともこの事については関心を持って一緒に進んでいく方向でお願いをしておきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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